それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
私達の距離は数十センチ。その距離が、なんだかもっと遠くに思えた。

本当は、隣を歩きたい。
別に担任なんだし、隣を歩くのはおかしいことじゃない。でもきっと、今の私の顔は教師じゃなくて…恋する女の顔をしてると思うから、どうしても先を歩いてしまう。

「先生、練習ってなにやるの?」

「リレー!坂上くん、第三走者でしょ?」

「だりー。」

「なに?アンカーやりたい?」

「無理、俺足速くねーし。」

気付いたら、坂上くんは私の隣にいてそう言った。

「…速いから、選ばれたんでしょ?」

「まあ、先生にいいとこ見せるよ。」

屈託のない笑顔でそんなこと簡単に言っちゃうから、私が恥ずかしくなる。

「馬鹿…。」

「生徒に向かって馬鹿はねーだろ、先生。」

そう笑う坂上くんを、愛しく思う。本当に、私達ってどうして教師と教え子なんだろうね。そうじゃなかったら今、坂上くんの手を握って一緒にグランドまで行けたのに。

この触れそうで触れられないこの距離が、恨めしいよ。
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