それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
「美加ちゃーん!」

バトンで私の頭をぶって相沢くんは笑った。

「いった…、なんなのよ相沢くん。」

「いや、元気ないなーって。どうかした?」

「…ううん。平気!ごめんね心配かけて。」

馬鹿ね、私。生徒に心配かけて。
私は教師なのに、こんなことでいいのかな。

「美加ちゃんは笑顔が似合うよ、そんな暗い顔じゃせっかく美人なのにもったいないよ。」

ニコニコ笑う、相沢くん。この子はいつも笑ってて、こっちまで明るくなる、ムードメーカー。

「ありがとう。」

「そう、その笑顔!やっぱ人間笑顔じゃないと!笑う門には福来たるってね!」

「…そうだね。」

「美加先生、でも辛かったら無理して笑わなくていいよ。無理矢理笑顔取り繕っても、もっと苦しくなるだけだから。もっと悲しくなって、その辛さをまた膨らませるだけだからさ。」

相沢くんはそう言って空を仰いだ。その顔は、どこか切なくて、見てるこっちが泣きたくなるそんな笑顔だった。

初めて見た、こんな相沢くん。いつも明るい彼にも、きっと堪えてる苦みがあるんだ。
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