それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
「ごちそうさまでした。」
食事を終えて、しばらく田中さん達と話してから教室を後にした。
「せんせ。」
振り返ると、ニッコリと不自然な笑顔を浮かべる坂上くんがいた。
「なに?」
「お金、貸してくんね?」
「…はい?」
差し出された片手をしばらく見て、私は聞き返した。
「財布忘れて。でもコーヒー飲みたくてさ。」
「我慢しなさい。」
「ケチ!たかが百円で。」
「あのねえ…金の切れ目が縁の切れ目なの。だから人からお金借りるなんてしちゃダメなの。」
「先公みたいなこと言うなよ。」
「私、先公です。」
そう答えるとしゅん、とした顔をする坂上くん。
「…わかった。貸すんじゃなくて奢ってあげる。」
「マジ?先生優しいー。」
ニコニコ笑いスキップする坂上くんが子犬みたいに可愛くて笑みが零れた。