それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
校内にある自販機の前で、坂上くんに問う。
「コーヒーは、微糖?」
「ブラック。」
「へえ、大人じゃない。」
そうクスリと笑うと軽く睨まれた。
「なんだよ、それ。」
「別に?…私は、カフェオレかな?」
「ガキ。」
「どこがよ。」
はい、とベンチに腰掛けてる坂上くんにブラックの缶コーヒーを手渡し、私は彼の隣に座り、カフェオレの栓を開けた。
「…先生ってここの卒業生なんだって?」
「そうよ、始業式のとき言ったじゃない。もしかして寝てたの?」
「教室で、な。」
「うわ、不良ー。」
うっせ、と小さく呟き坂上くんはコーヒーを飲んだ。
「変わってないなあ、ここは。なんにも。」
しみじみ思う。そりゃ、5年くらいで劇的な変化なんて起きないだろうけど、変わらない母校が落ち着く。
変わったのは私が制服じゃないくらいで。
「…先生って、どこまでが恋愛対象?」
「え?」
真剣な眼差しで私を捉える、生徒にとくんと跳ね上がる心臓。
「なんで?」
「なんとなく?いいから答えてよ。」
「…そうだなぁ、父と同い年くらいまでかな?」
「下は?」
「…、今のところ、4歳。」
「今のところ?」
どくんどくん
心拍数が上がるのが分かる。
「…生徒のことをそんな目で見ちゃいけないから。…ううん、見れないの。そうじゃなきゃ、教師失格よ。」
そう。生徒に恋をしちゃいけないの。