それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜

校内にある自販機の前で、坂上くんに問う。

「コーヒーは、微糖?」

「ブラック。」

「へえ、大人じゃない。」


そうクスリと笑うと軽く睨まれた。

「なんだよ、それ。」

「別に?…私は、カフェオレかな?」

「ガキ。」

「どこがよ。」

はい、とベンチに腰掛けてる坂上くんにブラックの缶コーヒーを手渡し、私は彼の隣に座り、カフェオレの栓を開けた。

「…先生ってここの卒業生なんだって?」

「そうよ、始業式のとき言ったじゃない。もしかして寝てたの?」

「教室で、な。」

「うわ、不良ー。」

うっせ、と小さく呟き坂上くんはコーヒーを飲んだ。


「変わってないなあ、ここは。なんにも。」

しみじみ思う。そりゃ、5年くらいで劇的な変化なんて起きないだろうけど、変わらない母校が落ち着く。

変わったのは私が制服じゃないくらいで。

「…先生って、どこまでが恋愛対象?」

「え?」

真剣な眼差しで私を捉える、生徒にとくんと跳ね上がる心臓。

「なんで?」

「なんとなく?いいから答えてよ。」

「…そうだなぁ、父と同い年くらいまでかな?」

「下は?」

「…、今のところ、4歳。」

「今のところ?」

どくんどくん
心拍数が上がるのが分かる。

「…生徒のことをそんな目で見ちゃいけないから。…ううん、見れないの。そうじゃなきゃ、教師失格よ。」


そう。生徒に恋をしちゃいけないの。
< 24 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop