それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
あんなに咲き誇っていた桜は儚く散り、新緑に包まれる5月。
すっかり"先生"と呼ばれるのに慣れた今日この頃。
「ここは、昨日言った通りこうなって…」
2年C組で授業。
ふと黒板から視線を生徒に向けるとまたあの生徒が寝ていた。
「…ちょっとみんなごめんね。」
みんなにそう断り、ゆっくりその生徒に近付く。
「ウェイクアップ、ミスターサカウエ。」
そう言うけど起きる気配のない坂上くん。
「起きなさい!」
大声を出すと、不機嫌そうに眉を八の字にした顔を上げる坂上くん。
「なんだよ…」
「授業中よ?そんなに居眠りばっかしてたら単位あげないからね。」
「うわ、脅迫?」
「どこがよ。寝てる方が悪いでしょ?折角起こしてあげてるのにその態度どうにかならない?」
「頼んでないけど。」
屁理屈ばかり言うわね、この子は…。
ふう、と深いため息をひとつ吐いて教卓に戻る。
「ごめんね、みんな。そしてここなんだけど、このイディオムは重要だから忘れないでね。」