それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
帰り道、沈みそうな夕焼けを眺めながら一人虚しく家に向かう。
辺りは綺麗なオレンジに包まれてその中を歩く私の影が細長くアスファルトに映る。
「先生?」
振り返ると、私の頭を一人占めしてるあの生徒。
「坂上くん。」
「今帰り?」
「ええ、坂上くんは?坂上くんって部活してなかったよね?」
「まあね。俺にもいろいろとあるんだわ。」
そうはぐらかす坂上くん。
「そう。」
「先生は彼氏…いないな。」
「は?」
いや、いきなり否定文?まずは疑問文からでしょ!…いいんだ、事実だもんね。
「いないよな?」
「…はい。いません。」
悲しいことに二年間フリーです。田中さん曰く腐ってるらしいです。村井さん曰く終わってるらしいです。
「そ。可哀相だから俺が彼氏になってやろうか?」
にやにや笑いそう言う坂上くん。
「結構です。坂上くんにはピチピチの高校生の彼女がお似合いよ。」
「ピチピチって…」
ああ、なんだか自分で言ってて悲しくなってきた。
「じゃ、気をつけて帰るのよ?」
「ガキ扱いすんなよ。」
帰ろうと向きを変えた私に坂上くんはそう低い声で言う。
「え…?」
「確かに年下だけど、生徒だけど俺はもうガキじゃねえよ、先生。」
「坂上くん…」
「帰るわ。じゃ、また明日。」
少し不機嫌そうな顔をしてそう言い残し、坂上くんは私をすり抜け行ってしまった。