それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
英語が大の苦手な坂上くんに、私は英語の楽しさが伝わるように一生懸命教えた。そして一日目の補習は無事に終了。
「お疲れ様。じゃあ、これ明日までにやってね。宿題。」
ニッコリ微笑み、坂上くんにプリントを二枚差し出す。
「…は?」
ぱちくり、と目を真ん丸にする坂上くん。正に、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だ。
「宿題。」
「なんで!」
「なんでって…」
私は大きな溜め息をまた吐く。…幸せが一体どのくらい逃げただろう。
「苦手を克服したくないの?」
「別に。」
「…いいからやってくること!」
「…へーい。」
そう言って私の手からプリントを受け取り、彼もまた溜め息。
「うわ、意味わかんね。」
「辞書引いていいから、やってね?どれも必要不可欠でよく使われるイディオムばかりだから、これさえ覚えれば長文問題も簡単よ!」
「…イディオムってなに?」
「熟語!」
…坂上くんの英語力を上げられるのか不安になってきた。言えないけど。