それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
レストランはお昼時なのにすんなり入れた。隠れ家みたいな感じの趣のあるお店だった。
アンティークな装いの、まるで中世のヨーロッパに来たみたい。
「気に入った?」
「うん、すごく素敵。」
「美加、昔からこういうの好きだったもんな。」
ふ、と小さく微笑み通された私の席を引く。
「ありがと。」
その行為にお礼をして、席に腰を下ろす。
そしてウエイターに差し出されたメニューを眺めた。
「ほんと、安いね。ランチ。」
「だろ?夜は結構するらしいぜ?まあ、新社会人の俺には夜とてもじゃないけど行けないし。」
「またまたー。未来の官僚がなに言うの。」
「俺はきっとずっと端くれだよ。」
眉を少し下げて、章は言った。
「そ?…私、このカルボナーラにしようかな。」
「じゃあ俺はペスカトーレ。」
すみません、とウェイターを呼び注文する章をぼーっと眺める。
「飲み物、どうする?」
「あ、じゃあ…アイスティー。レモンで。」
「俺は、アイスコーヒー。お願いします。」
「畏まりました。」
そう綺麗な角度で腰を曲げて微笑むウェイターさん。
「ペスカトーレにアイスコーヒー?合うの?」
「食後で頼んだから。」
「そっか。ブラック?」
「ごめん、微糖。俺甘党なの知ってるだろ?」
「そうだけど、飲めるようになったかなって。」
「―お互い、ちっとも変わんねーな。」
章は優しく言った。
見てくれは新社会人
でも中身は大人に成り切れてない、子供。
子供と大人の境界線はなに?