それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
「先生、遅い。」
教室にはもう坂上くんがいて、不機嫌そうにそう言った。
「ごめん、ごめん。これ、買ってたの。はい、ご褒美!」
私はニッコリ笑って、缶コーヒーを差し出す。
「ご褒美?」
「毎日休まず補習に来たでしょ?宿題もちゃんとやってきたし。少しくらい、アメあげなきゃね。」
「アメ、ねえ…」
サンキュー、と私の手から缶コーヒーを受け取り微笑む彼。その笑顔が可愛くて、私も小さく笑みを浮かべた。
「見せて?宿題。」
そう言うと、坂上くんはおもむろに鞄から少しシワの入ったプリントを出した。
「もっと大切に扱ってよ…。」
「いいじゃん。別に」
溜め息をして、私は赤いペンを取り出して添削をする。初めはろくに小文字も書けやしなかったのに、完璧とまではいかないけれど…確かに上達してる。
それが嬉しくて、また頬が緩みそうになる。でもそれを必死に堪えた。
坂上くんは蝉が競い合うように鳴く外を見ながら、私のあげたばかりの缶コーヒーを飲む。
「夏だな、先生。」
「いきなりなに?もう7月の下旬なんだから。これからじゃない。」
「そうだけどさ。」
第2ボタンまで開けたカッターシャツをぱたぱたと扇ぐその姿。見え隠れする素肌にドキドキする私。…馬鹿ね、まるでうぶな女じゃない。