それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
そんな賑やかな外とは裏腹に、静かな教室。
ただ坂上くんのペンを走らせる音と、辞書をめくる音だけが、包む空間。
「先生、」
「なに?」
「―やっぱいいや。」
呼んだくせにそう呟き、溜め息を吐いた。
「言いかけたなら言いなさいよ!気になるじゃない。」
「…どうして今日はオレンジなんだよ?」
「え?」
「いつもカフェオレだろ?」
どきりとした。私の全てを見透かされているようなその黒い瞳を直視できない。
「た、たまには気分転換に…私だってカフェオレ以外飲むよ。」
だからその視線をこれ以上向けないで。その視線を、独り占めしたくなる。
「…ふーん。」
坂上くんはまた視線をプリントに向けた。そして私は安堵の息を漏らさぬよう、必死に堪えた。