それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
ガタッそう坂上くんが席を立つ音は、妙に私には大きく聞こえた。
「先生。」
私の横に立ち、呼ぶ。
先生…ここに大きな壁が確かにある。
そしてそれは一瞬の出来事だった。
彼の端正な、どこかほんの少しだけ幼さが残るその顔が目の前にある。
唇が、熱い。少しざらついた感覚が唇から身体中にほとばしる。久しぶりの感触に身体の奥がじわじわ熱を帯びはじめる。
あんなに騒がしい蝉の声も野球部のカキンと言うバッドにボールが当たる音も、なにも聞こえない。全神経が一点に注がれる。
「―これが補習の皆勤賞ってことで。」
「…ばっ、馬鹿!」
悪戯っ子のような、にやりと片方の口角だけを上げるその笑みに、私はいつも惑わされる。
「俺、先生が好きなんだよ。」