それでも傍にいたい〜先生と生徒の逢瀬〜
私達は恋人同士になったけれどデートなんてできない。もし生徒に見られたら、お互いのマイナスにしかならないから。

坂上くんはそれでもいい、と微笑むだけだった。
先生とこうしてられたらそれだけで十分だと笑った。
私もそうだよ。
坂上くんと過ごせたら、坂上くんの彼女になれたらそれだけで幸せなの。

今はただ、それだけで十二分で。本当はちょっぴり、坂上くんの彼女です!って胸を張りたいけど。

「美加。」

「え?!」

教室から出て、蒸し暑い廊下を歩いているといきなり坂上くんが私の名前を呼んだ。

「その顔、最高!」

そう大口を開けて笑う坂上くんの足を軽く踏んだ。

「いっ…た!」

「ふん!」

「美加ってガキっぽいとこあるよな。」

「…ガキってなによ。それになんで呼び捨て?」

その問いに坂上くんは笑った。その笑顔は眩しかった。向日葵が憧れる太陽よりも、ずっと眩しい。

「僕彼氏。きみ彼女。呼び捨て普通。」

「…あのね要点だけじゃ、―じゃなくて困るよ!誰かに聞かれたらどうするの?呼び捨てなんて普通生徒しないでしょ?」

「うーんいいんじゃないの?」

「よくない!私はクビ!君は…反省分とか処分あるんだよ?」

「先生がクビ?」

目をぱちぱちと瞬きをする。なぜそうなるのか、と顔に書いてある。

「そう。生徒を、ましてや受け持ちのクラスの生徒。許されないことなの。」

「…なら誰もいないときは呼んでいい?」

「―電話ならいいよ。」

「はあ?」

「じゃあ、これからも"先生"で。1年半我慢する、美加って呼ぶの。」

それまで、坂上くんは私のこと好きでいてくれるかな?その言葉に嬉しい反面そんな不安を覚えた。
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