君に贈る詩*


このままじゃ、きっと駄目な気がする。


多分あたしは終わりにしようなんて頭では思っていても、彼の「信じて?」という言葉をまた簡単に信じてしまう。


それじゃあ前に進めない。


今日は「信じて?」の言葉を言われる前に終わりにしよう。



「正樹!」


彼の近くまで来て叫ぶ。


「さ、紗弥…?
お前なんで…」


正樹は心底驚いた顔をして知らない女と組んでいた腕をパッと離し、こちらに向かって来る。



あたしは3メートルくらいのところまで正樹が来たところで、そこで聞いて!と強い声で制した。

少し向こうで女の人が正樹ぃ?と甘い声で呼ぶ声がする。



「あたしね、正樹が好きだった。」


「…」


「何度も言った信じて、と言う言葉も信じた。

でもね、もう終わりにしよう?」


「な…」
「今までありがと。
辛いことばっかりだったけど、幸せだったよ。」


何か言いかける正樹を遮ってあたしは一方的に話し続けた。


「ばいばい。」


最後にそう言って、何か言いたげな正樹から目を反らし、後ろを向いて走り出した。




…泣かない。


泣かないよ。



前に進むんだから。



そう心に誓って夢中で雨の中を走り続けた。



…明日は風邪、引いちゃうかもね。



でも、そのあとにはまた笑顔になって新しい恋もできる気がするんだ。



次は信じて?なんて言葉いらないくらい信用できる恋が。




〜信じて?〜
(君のその言葉、最後は聞かなかったね。)
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