君に贈る詩*
届かない
「奈緒。
さよなら、しようか」
「……なんでよ」
「このままいたって、こうやって喧嘩してばかりだ、きっと」
雄は苦しげにそう答えた。
限界なのはあたしにだってわかってた。
だけど、自分から手放すことなんて出来なかったの。
「お互い、さ。
タイミングが合わなかったんだよ。
だからどっちが悪いとかそういう問題じゃないんだよな」
「……わかってる」
わかってるの、わかってる。
「うん。
ありがとな、3年間」
そう言ってあたしの頭を撫でる雄の手は温かい。
反対に、あたしの頬には冷たい涙が伝っていた。
いつ別れが来てもおかしくはなかったのはわかってたはずなのに、実際言われると、そんなことは関係なくなる。
行かないで、離れないで。
心の中で叫ぶけど、声にならない。
「……じゃあ、な。
いい人見つけろよ?」
雄はそう言って立ち上がる。
頭にあった温もりがそれと同時に消えた。
『バタン』
ドアが閉まる。
多分、もう一生会えない愛しい人は扉の奥に消えていった。
届かない
(好き。
どんなに言ったってもう遅いんだね)