小島よしお


DVDを見終わり、布団に戻り、寄り添っていたとき、時間は既に1時を回っていた。

もう電車はない。

本当に時間は早く過ぎていく。

当初予定していた、テトリス大会も、オセロも、しそ巻きのツマミを作ってくれることも、
祈りの国語の成績が10という自慢の確認の為に、見せてくれる筈の通信簿も見ていない。

何もしていないのに時間はどんどんなくなっていく。
そして、いつも通り時間が押し迫ってくるにつれ、感慨深くなる。

「一歩外に出れば、遠い昔のことに感じるのが嫌なんだよ」

俺が言う。

「どうすればいいかな?」
「…デコピンして」
俺は言った。

「やだよ~、痛いじゃん」
「いいんだよ、痛みが残るほど覚えてられるじゃん」
「じゃあ、いくよ」

優しい祈りのデコピンが3発・・

2秒で忘れるほどの威力だった。

「できないよ・・あたし」
祈りは俯き、俺の胸に顔を埋める。



「・・乳首舐めて」

雰囲気を読まずに俺が言う。

いや…雰囲気をよんだんだけどね。

゛暗いの嫌じゃん゛

その時はそう思った。

馬鹿と言われようが明るくしていようと。

時と場合によりこの気持ちは大きく変わる。

泣きたい時もあれば、意地をはったり、笑ったり…

今日は明るい日。

だってここまでずっと祈り楽しそうだし

最後に結局悲しむのはナンセンスと思った。
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