繭(まゆ)
私?
どうして?
世界が転回したような激しい動揺が私を襲う。
考えようとしても、頭の奥が痺れたようになって何もまとまらない。
鼓動の速さだけが感覚を駆け巡り、もう、母の声も、夫の声も私には届かなかった。
私は、
フナハシサワコは、死んだ。
じゃあ、今
ここにいる私は、誰なのだろう?
泥の様に重たい両手が、少し動いた。
目頭を押さえようと、右手を持ち上げる。
いつも考え事がある時には、必ずそうするように。