繭(まゆ)
そうだ。
私はもう、サワコではない。
意気地がなくて、流されるだけの私は死んだんだ。
だから、もう一度彼に合って、
彼の性格や、好きなタイプや、どんな音楽を聞くか、そんなのを知り尽くした女の子が目の前に現れたら──?
私は、今度は
彼に愛されるかも知れない。
そう考えると、どうしようもない悲しみの海の中に、一筋の光が照らされた。
灯台は今は遠すぎて、どこにあるのかはわからないけれど、
とにかく私は、そこまで泳ぐのだ。
もう、生きる意味なんて、
他にはない。