繭(まゆ)

そう思えば。


今の暮らしはなかなか楽しいものだと思う。
(退屈さを除けば、だけど)時々でも、堂々と母に会うことができるのだから。


窓の外は見慣れた集合住宅の立ち並ぶ空。

さも、もの珍しいものを見るかのように、干された洗濯物や走り回る子供たちをじろじろと見つめる義母も、もう気にはならない。


「まゆちゃん、のりこばぁばに、あいたいな」



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