繭(まゆ)
「まゆちゃんは、何が食べたいのかな?」

「のりこばぁばの、つくるごはんなら、なんでも」


あまりの利発な言葉にしまったと思いながら、片言で思いを伝える難しさを知る。

もう少し大きくなれば・・・・・・もっと喜ぶことを言ってあげられるのに。


「まゆちゃんは、やさしいね。お母さんそっくりだね」


そうやって、藤の棚上に飾られた写真立てを見て泣きそうに微笑む母を見ていると、やはり私も泣きそうになって、
いっそ、全てを洗いざらい話してしまいたく、なる。


母になら──?


母になら、


私の秘密を


全部話せるんじゃないのかな・・・・・・




そう何度も思ったけれど。

結局は心配をかけたくないから、言葉は喉の奥から前へは出てこない。


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