繭(まゆ)
今日、母が作ってくれたのはサワコが大好きだったロールキャベツ。
いつも娘の好物ばかりを作るそんないじましさに心がまた少し痛む。
「おいしいね」
「のりこばぁばのおりょうり、だいすきよ?」
「ありがとう。まゆちゃん」
夕食が終り、ちらと時計を見ると既に8時を回っていた。
淳一は今日も帰りが遅いのだろう。
最近は日曜日くらいしか顔を合わすことがない。
「パパ、さみしがってるかもね」
実はすっかり覚えてしまい、いいかげん飽き飽きしている絵本を私に読み聞かせながら、母がそうつぶやいたけど
私が思うには、
彼は「娘」のことには然程関心がないように見えた。
とても、いい夫ではあったのだけれども。