繭(まゆ)
封筒に丁寧に書かれた文字を、
ゆっくりと指でなぞる。


棄てることができなかった。

どうしても

どうしても

最後のひとつ


私が朗と繋がっていた証を残しておきたかった。




この執着は、私が自分を奮い立たせるための、
現実に適応するための、単なる思い込みなのかも知れない。
心のはじっこでそうも思っても、いた。


だけど

時間が止まったままの

サワコだった頃の思い出が溢れてくる部屋にひとり座っていると

単なるノスタルジーでは説明がつかないくらいの痛みが全身を駆け巡る。


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