繭(まゆ)
「おかえりなさい、パバ」
「ただいま」
ネクタイを緩めながら靴を脱ぐ、疲れた表情の淳一。
私のパパ。
「お帰りなさい、淳一。今日は早かったじゃない」
義母と話をしながら、ぽんぽんと私の頭をさわる。
このところの連日の残業で、顔を見るのは久しぶりだ。
今日みたいに、帰宅が9時ならかなり早い方。
「そうか、繭がまた百点とったのか」
「お父さんの血筋かしらね、学校でもずば抜けて成績がいいみたいよ」
そりゃそうだろう。
「勉強もいいけど、クラスのみんなとは仲良くやってるのか?」
ふぅん、父親ぽい質問。
「仲良くしてるよ」
子供らしい返答。
「そうか、ならいい」
相変わらず、何だかぎくしゃくした会話。
端から見てるとそんなことはないんだろうけど。