繭(まゆ)
教室の中に冬の低い陽射しが入り込んで、本多くんの表情を見えなくする。


おかげで、懐かしい何かが
忘れていた懐かしい何かが
少しだけ胸を締め付けて

またすぐに、離れていった。


──どうかしている。


「何か用事だった?」


「え?・・・・・・ああ、ちょっと聞きたいことあって・・・・・・」



私、どうかしている。

本多くんと史朗をダブらせるなんて


どうかしてる。



「本多くんってさ、今好きな子とかいるの?」


動揺の理由が悟られる心配はないだろうけど、不自然な1オクターブ高い声に、自分ですこし驚いた。


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