繭(まゆ)
午前11時を過ぎたところか、
突然陣痛が始まった。


波のある、差し込むような内臓の痛み。
冷たい汗が額に滲む。

とりあえず、10分間隔になったらタクシーを呼ぼう。母には、迷惑をかけられない。


冷蔵庫からグレープフルーツジュースのパックを取りだし、コップに半分ほど注ぐ。


ようやく痛みが和らいで、私はジュースを口に含んだ。

あと、何時間これを耐えねばならないのか。
何回、苦しまないとならないのか。

正直、どうしたらいいか全く解らなかった。


だけど、自分だけでやり遂げたかった。
そうすることで、お腹の中の子との繋がりを強くできるような気がしたからだ。
愛せるような、気がしたからだ。


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