一つの物語
近くの電灯がジーと音をならして、明かりがついた。
宮は一歩が近くにいるせいか、一歩の優しそうな目から、背けることも話すこともできなかった。
一歩も、下にいる宮の黒く澄んだ目から目を背けることができなかった。宮が背けるのを待った。
ほんのわずかな沈黙が続いた。目は合ったまま。
一歩が、
「……。」
宮も、
「………。」

宮も一歩もうごけなかった。
一歩の顔が……、
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