一つの物語
西野がいなくなり、いつものように宮と一歩が二人きりで帰った。
二人とも微妙な空気が流れる。
二人ともびしょ濡れ。宮が、
「ネェ~、一歩??」

「うん??」

「左野香ちゃんのこと……どう…思ってる??」
「どうって、……別に……」
「……そう!!」
宮が少し笑った気がした。
宮の前髪が濡れて、顔がよく見えなかった。でも、宮の顔が赤くなっているのが分かる。
次の瞬間、雷が光った。
宮が一歩にだきついた。
雷の音が遠くでなった。
宮は昔から雷が苦手だった。
宮が、離れない。
雨の音だけが、響く。
< 34 / 63 >

この作品をシェア

pagetop