昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦
承:「賽は投げられた」
「…………ご、ごめんくさ〜〜い……。」
意識が落ちる寸前の、あの音楽のせいだろうか。目の前に、チョビ髭を生やした警察官が立っているような気がした………。
……いや、違う、そうじゃない。自分は何かとんでも無い体験をしていたのでは……?
「…………はっ?!」
気が付くと、俺は、カビ臭い部屋の椅子に寝かされていた。
リクライニングを戻し、まだはっきりしない頭を振って、自分に何が起きたのか整理しようとして………、
「………目は、覚めたかね?」
………再び、そのオッサンを見つけてしまった……。
俺に対して背を向けていたオッサンが、椅子を180度クルリと回転させ、こちらに向き直……、
─────ドゴッッ!
………ろうとして、膝を思い切り指揮卓らしきモノにぶつけた。
「…………突然の無礼、許してくれたまえ。」
胸の前で組んだ両手に顎を載せ、気取っている様子だが、目が涙目になってる。膝も分からんように軽く振ってるし。
「何モンやねん、オッサン?!」
俺は、まず当然の問いをぶつけてみた。
オッサンは懐に手を入れ、人差し指と中指の二本で優雅にカードを取り出…………そうとして、勢い余ってカードが指の間から飛んでいった。
4回目のチャレンジでようやく俺はカードを受け取る。
古ぼけた、名刺だった。
「 株式会社 吉本興業
特別部署 渉外部部長
林 忠通 」
(……渉外部………林……。)
よくは分からんが、部長という肩書きや、林という名字からして、随分なエラいさんやという事は分かった。
………に、しても。
「ここは、一体…………?」
オッサンに気を取られて見てなかったが、俺が今いるのは、随分と高い場所だ。
いたるところ、赤い錆び鉄と色とりどりのカビに覆われてはいるが、間違い無く、軍艦の艦橋内部。
辺りには、いくつかの指揮卓、伝声管、舵輪………そういったものが、所狭しと並んでいる。
「戦艦、大阪。それが、この船の名前だよ。」
「大阪…………?」
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