昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


「残念ながら、この『大阪』には、歴史から消えて貰わなければならないんですよ。…………勿論、この船の存在を知ってしまった者も、ね。」

林のオッサンと言いあっていた指揮官の男が俺の方を向いて、そう冷たく言い放った。

同じような服装の男たちが、無表情に俺との距離を徐々に縮めてくる………。

(俺………死ぬんか……?)

両手を挙げた体勢のまま、俺は床へとへたり込んでしまった。

それもそうだろう。会社からの無茶な命令のせいで、ワケも分からぬまま、殺されるなんて………。

───その時。

指揮官の男の注意が俺に向いた隙をついて、林のオッサンが、横の指揮卓の赤いボタンを、押した───!

♪ズンチャ、ズンチャ、

 ズンチャ、ズンチャ……♪

艦内放送の電源が入り、辺りに、ジャズ調の軽やかな音楽が響き渡った。


♪ミナミへ行こう、

 道頓堀へ………♪


(………お、おい、この曲って事は、まさか……?!)

俺は、その曲が流される意味を何となく肌で感じ取り、銃口に囲まれているのとはまた違った、言い知れない恐怖を覚えた。

あの、「浪花のモーツァルト」とか呼ばれている、とあるオッサンによって作曲された曲。その曲が流されていた、とある飲食店。その店先で常に、道行く人々に愛嬌を振りまいていた、その、人形は…………!!


スパンッ!

スパパパパンッッ!!


「Oh!」

「Ouch!」

まさに、一瞬だった───!

俺を取り囲んでいた男たちは全員、カミソリのように鋭い大阪名物ハリセンチョップを喰らって、床にうずくまっている。

そして、現れたのは………、

「………………やっぱし。」

とんがり帽子に丸眼鏡。

大きく動く太眉毛に、

服は、赤と青のド派手な縞模様。

手には、いつもの太鼓のバチでは無く、純白の巨大なハリセンが握られている。

「紹介しよう。当艦の優秀なクルー、くいだおれ太郎君だ。」

誇らしげに語る、林のオッサン。

ハリセンを装備した戦闘仕様ではあるが、確かに、あの大阪を代表する人気者、くいだおれ太郎が、そこには立っていた。







……………50体以上も……。




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