昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦
ザム、ザム、ザム、ザム。
倒れた男たちを縛り上げ、再びハリセンを手にしたくいだおれ太郎軍団が、足音も高く、CIAの男へと迫る……。
「………ククク。形勢は逆転したようだね、どうする?エージェント君……。」
先ほどのお株を奪うように、林のオッサンがくいだおれ太郎たちを従えて、エージェントの男を追い詰めていく。
己の不利を悟って、ジリ、ジリと後ずさっていた男だったが、その背がガラス窓にぶつかった。
「………くっ………、き、今日のところはこの位で見逃してやるっ!!」
ガシャァァァンッッ!!
吉本的には模範解答な捨て台詞を残して、男は自らガラスを破って艦橋から飛び降りていった。無論、あの位では死なない訓練は受けているのだろう。
─────数分後。
残されたCIAの連中を営倉へと放り込んだくいだおれ太郎たちは、艦橋の所定の部署へと散っていった。
ここ指揮所にも、オペレーター、操舵士、観測員など、指揮系統に従事する者たちが忙しく働き始めている。
………………しかし。
──カシャ、カシャ。
──カシャ、カシャ。
右を向いても、左を向いても、忙しく首と眉毛を動かしながら、与えられた仕事を黙々とこなすくいだおれ太郎………。
まるで、タチの悪い夢の世界のようだった…………。
「………私の、願いはね。」
そんなくいだおれ太郎たちに囲まれた林のオッサンが、再び、俺に向かって語り出した。
「この『大阪』を使って、この地球を、笑いに満ち溢れた真に平和な世界とする事なんだ。」
まるで、目の前にその世界が見えているかのように、林のオッサンはウットリとしている……。
「その為には………そう、溢れんばかりの『笑力』を持った、優秀な芸人が必要なんだ。」
「俺、帰ります。」
オッサンが明らかに、何かを期待する目で俺を見ていたので、俺は即座に答えてやった。
冗談やない……これ以上、こんなヤバい目に遭ってたまるかっちゅうんじゃっ!!
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