昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦
俺の拒絶の言葉に、しかし、林のオッサンは微笑を崩さずにこちらをじっと見ている……。
「残念ながら、君に拒否権は無いのだよ、梶山君。」
「ちょっ……何で名前……?!」
まだ確か名乗ってなかったハズなのに………?!
「E−425番を頼む。」
オッサンが近くのくいだおれ太郎に何か命令を出した。
すると、指揮所の何面かあるデカいモニターに、
「よしもと・若手芸人夏の陣!
とっておきマル秘ネタ100連発!!」
………という、いかにも安っぽいタイトルが映し出されたのだ……!
俺は、稲妻に打たれたような衝撃を、その時確かに感じた。
「……ちょ……ちょお待てっ!!」
「巻末まで早送りして。」
オッサンが冷酷な笑いを口元に浮かべ、さらに太郎に命じる。
「あ……アカンアカン!やめんかい!今すぐ!!」
────人には、絶対に他人に知られたくない、「恥部」というものが時に存在する。
そのDVDの巻末。そこに収録されている、「それ」こそが、まさに俺にとって───!!
『ど〜〜も〜〜!カ〜ジカ〜ジ、ヤマで〜〜す!』
アホみたいなバカでかい蝶ネクタイを付けた、かつての、俺……。
「……や、やめて!お、お願いやから!ホンマ、これだけはっっ!!」
俺の必死の懇願も虚しく、画面の中の俺は、あの史上最悪のネタを始めようとしていた。
『カジカジヤマの、エロエロ日本昔話シリ〜〜ズ〜〜っ!!』
「わ〜〜〜っ!わ〜〜〜〜〜っっ!!」
……拷問だ。これは、間違いなく拷問である。
さっきから指揮卓を操作しているくいだおれ太郎を押し退け、そこら中のボタンを必死に押すが、映像は止まらない………!
『ではまず、「げんこつ山のたぬきさん」から!ハイッ!
♪ロシアンパブの〜、
ターニャさん〜、
おっぱい揉んで〜、
デュエットして〜、
ボトル入れて、
おしり触って、
「ハ〜イ、マタアシタ〜」
……ハイッ!いかがでしょうか?』
───し〜〜〜〜〜ん───。
…………………燃え尽きたぜ。
真っ白だよ………。
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