昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦
再び、黒門市場。
「さ〜〜〜、もう、持ってってや〜〜〜!!」
辺りも既に暗くなり、この道40年のベテラン、武内虎子(46)の客引きの声にも焦りの色が見えはじめている。
店の奥から売れ残りの魚の確認に来た、看板出戻り娘の武内寅美(23)は、そんな母を見て呼び込みを手伝おうとしたが………、そこで、また動きが止まってしまった。
「…………お母ちゃん……?」
「何やの?!呼び込みやったら教えへんで!こういうモンのテクはな、教わるんやない、盗むモンなんや!」
「いや、そうやのうて、あれ見て………。」
「はぁ?!んなモン、いちいち見てられへんわ!
………あ、お父ちゃん、お父ちゃん!今日はアジ安いで〜〜!閉店間際の出血大サービスや、買うたって〜〜!」
「せ、せやけど、エライ事やで?!『づぼらや』のフグが戦闘機叩き落として、『かに道楽』のカニが戦車踏み潰しとるんやで?!」
「寅美……ウソつくんやったらもっとマシなウソつかんと、そんなん、だ〜〜れも聞いてくれへんで?やる事ないんやったら、裏のトロ箱洗といで!早よう!」
「……う………うん………。」
……大阪は、やはり平和であった……………。
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