昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


「気付いているとは思うが…………私は明治39年生まれの、戦前の人間だ。まぁ、コールドスリープという、まだ未完成な技術によって、どうにかこの平成の世に生きてはいるがね。」

カツ、コツと、革靴が乾いた音を立てる。

「この艦はね。定期的、そう、5年に一度くらいは『笑力』を充填しないと、完全に機能を停止し、ただの鉄屑になってしまうんだよ。だから、私は5年に一度は『冬眠』から目覚め、街に出て『笑力』を集めていた。」

その長い年月を思い出すかのように、オッサンは遠い目をしている。

「その度に思い知らされたのは………戦争の持つ愚かさだった。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン、中東、アフリカ、イスラエル………。一体、どれだけの人員と物資と、金銭が浪費されたと思う?!」

まるでオペラの悲劇のように、手を広げ、天を仰ぐ。

「私は思った………。人類の歴史の中で、戦争に費やされるエネルギーを抑え、それを多方面に向けられたなら………。そう、その為の第一歩として、この『大阪』があるのだよ!」

振り返り、俺に詰め寄るオッサン。その目は、鬼気迫るものがあった。

「そこで第一問だ、梶山君。………この艦で、私と君、営倉の連中以外に、人間は居るかね?」

「………いない………と思う。」


……そうだ。

動いているクルーはくいだおれ太郎ばかり。「づぼらや」も「かに道楽」も、人が乗っているような雰囲気は無い。

「問二だ。この太郎君たちと、あのフグにカニ。その制作費と、あの戦闘機一機………はいくら何でも高すぎるから……、戦闘機から発射されるミサイル一発。高いのはどっち?」

「………………ミサイル。」

確か、「フェニックス」とかいう、長距離からレーダー誘導で対象を攻撃出来る最新鋭のミサイルで、一発3億くらいするシロモノらしい。だとすれば、当然、ミサイルの方が、何故こんな風に動けるのかがとてつもなく不思議なだけの、チンケな看板連合軍よりも、ずっと高価なのは言うまでもない。




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