昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


忠通がかつて勤めていたのは、とある研究所だった。

「開戸研究所」というその施設では、今もとある研究に心血が注がれている。

『怪力線』────後の世では超音波という呼称が一般的となる、特殊な光線。彼は、その軍事目的への転化に反対し、研究所では閑職に回されていた。

その矢先の、吉本興業への引き抜き。そして、あの軍部からの計画書。

「………これを縁と呼ばずして、何と呼ぶんやっちゅうねん……。」

いつしか、忠通は船の艦橋となる部分に到着していた。そこはまだ手がつけられていない状態で、甲板にはぽっかりと穴が空いている。だが彼はその穴を見ずに、仰ぎ見るようにして頭上を見ていた。まるで、既にそこに艦橋がそびえ立っているかのように。

「見てろや………ワシはワシのやり方で、この戦争を終わらしたる…………!!」

数日中にはここに運ばれてくるはずの「その建造物」を脳裏に思い浮かべながら、忠通は、ただ頭上を見上げ続けていた─────。





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