昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


「…………ありがとう。その気持ちだけで、十分だ………。」

オッサンは、もうこちらを見ようとはしなかった。

「さぁ、もう行きたまえ。君の、帰るべき場合へ…………。」


………そして、手だけでくいだおれ太郎たちに、「行け」、と命令する。


────ダッ───。


最初の太郎が、傾いた艦橋から、虚空へと飛び降りた。


────ダッ───────。

──────ダッ─────。

─────────ダッ──。

続いて、次々とそれに習い、太郎たちが飛び降りていく。


俺はもう一度、オッサンに一緒に脱出するよう説得しようとしたが───、

─────ガシッ────。

横から、ひとりのくいだおれ太郎に抱きかかえられ、


────ダ、ダッ───。


気づいた時には、虚空へと投げ出されていた。


「オッサンーーーーーッッッ!!」


「この大阪を、私が愛して止まない大阪を、君たちの力で、笑いに満ち満ちた、素晴らしい街にしてくれよ………!!」








──────それが、オッサンの最期の言葉だった───。




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