昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦

起:「お荷物芸人へのミッション」



「ども、ありがとうございましたーーー!」

威勢だけは良いそのシメの声に、だが、観客席の反応は冷ややかだった。お座なりの乾いた拍手が、パラ、パラとホールに虚しく響く。

とりあえず笑顔は崩すまいと頑張ったまま、やはり威勢だけは良いダッシュで袖まで下がり、次の芸人仲間に「おつかれー」と声をかけ、舞台を降りた。

「………はぁ。」

今日も、ウケんかった。

昨日もウケんかったし、おとといもウケんかった。きっと明日もウケんやろうし、明後日もウケんやろう。

こうして、この俺の、梶山宏樹(かじやまひろき)、芸名「カジカジヤマ」の人生は、浪費されるだけなんやろか……。

……いや、違う!

今日スベろうとも、それはきっと明日への糧となってるハズ!例え1センチでも1ミリでも、前に進む努力が大事なんや!

『キャァァァァァ〜〜ッッ!』


そう思って気合いを入れた直後に、次のコンビの登場で沸く観客席の声……。

芸歴10年目に突入しながら、未だこのポジション。周りからは「踏み台」とか呼ばれはじめている…………。

「………………バイト行こか。」

そう思って廊下をすごすご歩いていた俺。

だが……………。

「梶山くん、ちょっと。」

廊下の先で、俺を待っていた人物に呼び止められたのだ。




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