昭和お笑い暗黒史────戦艦「大阪」解体大作戦


いきなり姿を現した艦橋が、完全に伸びきった所で、振動は止まった。

「………こ、これァ、もしかして……………?」

しばらく呆気に取られていた俺だったが、やっと我に返ってそれを見た。艦橋とばかり思っていたが………よくよく見ると、鉄骨むき出しの無骨なデザインのその塔は、大阪人なら誰もが見覚えのある…………、

「………つ、通天閣………?」

そう思ったが、しかし、所々、形が違う。塔の下部分が………何か、フランスの凱旋門モドキのような形してるし。



…………その時、



♪ぱららぱっぱら〜〜、
 ぱららぱっぱら〜〜、
 ぱららぱっぱら〜〜、ぱ♪



……俺にとっては、「異様に聞き覚えのある曲」が、その「通天閣モドキ」から聞こえて来たのだ。

そして、気が付けば、まるで影から滲み出したかのように、俺の目の前にひとりのオッサンが出現していた。

「………おわぁっ?!だ、だだだ誰やねんオッサン!?」

その、ダークストライプの洒落たスーツを着てはいるが、どこかボケーッとした印象のオッサンは、俺をみとめるなり、

「……君か。この『大阪』を蘇らせてくれたんは………!」

そう言って、俺の手を両手でグワシ、と掴んだ。目元は既にグシャグシャに潤んでいる。

「………し、してないしてない、何もしてない!」

手を掴まれたまま、ブンブンと頭を振って必死にアピールしたが、オッサンは聞いていないようだ。

「話は後だ。さあ、艦橋へ行こう。」

「い、いやや、帰る!俺は帰る!こんなワケの分からんモンに関わってられるかい!」

必死に逃げようとした俺だったが、そんな俺の目の前にオッサンの右手がスウと出され、その指がパキン、と鳴らされた。

すると、いきなり俺の意識はブレーカーでも落ちるかのように暗転し、ゆっくりと閉ざされていったのだった……。



♪ふんわかぱっぱ〜〜、
 ふんわか、ふんわか、
 ふんわか、ふんわか、わっ♪


薄れゆく俺の意識を嘲笑うかのように、「妙に聞き覚えのある音楽」のサビが高らかに響き渡り、そして、遠くなっていく………。




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