しなやかな腕の祈り
お母さんは、左手の人差し指と中指に煙草を挟んでいて、その煙草を吸うのも忘れて…あたしを見つめ呆然と立ち尽くしている。





「来たんか…???
日本から…」





あたしは、その問いかけに答える事も忘れていた。
知らず知らずのうちに、涙が頬を流れ落ちていく。






間違いない。
この人だ。






何を話したらいいのか…どんなリアクションを取ったらいいのか…
頭の中は真っ白で、珍しく涙ばかりが出てきて言葉が出てこない。




「気付いたら…セントレアで飛行機を待ってました」




やっとの思いでその一言を出した。



「うん…」



お母さんも、相槌を打ってくれた。



「フラメンコが盛んな所を渡り歩いて捜したんです。
だけど全然見つからなくて…帰国考えてた時に
アンダルシアへ行って…裕子…裕子さんに会って…それで…」





嗚咽で何にも喋れない。
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