しなやかな腕の祈り
でも、踊らなきゃ。
一曲だけでも踊らなきゃ先に行かせてもらぇそうにない。



「ole!!!」




スパニッシュギターの音色に合わせて
あたしは力の限りにハレオをあげた。
目の前の女性は満面の笑みで
あたしのハレオにハレオをかぶせた。





「あなた上手ね」





ひとしきり踊ったあと、水を飲むのに
また人混みからはずれた。





「幼稚園からバイレしてますから」




一言こたえると、女性は笑った。




「あなた、日本のどこから来たの」
「…三重です」





恐る恐る答えた。ここまできて
この女性が母親の事を知っていたらと思ってしまって
何だか怖じ気づいたのだ。





でも、予感は当たるのだ。






「三重!?
三重って言ったら千秋さんも三重出身ね。
知ってる??大屋千秋さん。」





体に戦慄が走った。



「その人!!!その人を捜しにきたんです。」





また大声を出してしまった。





「あら!!そう…なんでまた千秋さんを」




女性が目をじっと見つめてくる。
この女性は、母親を知っている。
知り合いとかなら、捜しに出なくても
< 4 / 137 >

この作品をシェア

pagetop