しなやかな腕の祈り
すぐにスペインへ経った。かつて自分がこよなく愛した…フラメンコの国へ行けば、立ち直れるだろうと信じて。マドリードに住居を構えて、どん底の生活を始めてから改めて秀一叔父さんに連絡をした時、叔父さんはお母さんを罵った。



「自分の子供を捨てるなど、人間のする事じゃない」



そう言われた。



もう、お先真っ暗だった時大学の受験を隣人に持ちかけられた。



「もう、何でもいい」



その頃のお母さんは、完璧な冷血人間と化していた。擦れていて普通。笑う意味なんかない。人間を信用したら、損をするから愛情を持たない。それが信念だった。



大学に入学し、裕子さんと知り合って少し人間味を取り戻した。




途端に湧き上がってきた感情は、あたしを思う気持ちだった。




毎晩酒を煽って、あたしを思い泣いた。毎晩、毎晩朝が来るまで…
< 54 / 137 >

この作品をシェア

pagetop