しなやかな腕の祈り



気付くと、あたしは両目から大量の涙を流していた。



お母さんの過去を知って、息が出来なくなりそうだった。



「多嘉穂がここまで来てくれた時、本音…追い返そうと思った。
でも、多嘉穂は泣いてたやろ???
小さい頃も泣き虫で、困った事思い出したら…
でも、時間が経つに連れ…嬉しくてたまらなくなった。
多嘉穂が今…自分の目の前にいるんだって認めたら。」



煙草をくゆらせながら、お母さんは言った。そして笑いながらこう言った。



「もう、死んだっていいや。
多嘉穂にもう一度会えたんだから」



あたしの涙は止まることを知らず、お母さんに抱きついて泣いた。お母さんもあたしを抱き締めてくれた。







だけど、あたしの中に芽生えてしまったもう一つの感情。






殺意。







お父さんへの殺意。






お母さんの腕の中で、あたしはまた一つ大きな野望を抱いた。
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