しなやかな腕の祈り
「いや、付いていく。中まで送る」



そう言ったかと思うと、あたしの荷物を引っ付かんでお母さんは前を歩き出した。

何にも言わずに、あたしも後ろへ続いて歩いた。




「細ぃ41歳」




あたしは茶化した。

さっきの複雑そうなお母さんの顔を忘れたかったのもある。

だけど、本当にお母さんは細かった。

歳の割にビシっとスキニーを履きこなしていて、腰くらいまで伸びた髪の毛は綺麗に巻かれて。

お母さん、こんな細い体で戦ってたんだなぁ…



「そりゃ痩せるよ。あんな練習毎日してりゃ」



少し振り返ってお母さんはピースして見せた。




あたしはそれから2時間後のNY行きの飛行機に乗る事になった。



「昼ご飯食べよ!!」


と言うお母さんの提案で昼ご飯を食べて、残りの一時間は空港内を2人でブラつく。



「多嘉穂、ちょっとここで待ってな」



そう言ってお母さんはあたしを置いて土産物屋へ一人で入って行った。

10分後出てきたお母さんの手には、薔薇の花のモチーフがたくさん付いた携帯ストラップが2つ握られていた。
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