しなやかな腕の祈り
「…行きな。乗り遅れたら大変」



また会えるのに、いつでも声なら聞けるのに。

またお母さんが離れて行って探しまくらないといけなくなるような気がした。



「日本に着いたら電話する」



お母さんは頷いた。

あたしの顔はヒドかったと思う。



「泣きそうな顔してんじゃないよ!!!」



お母さんがそう言った瞬間、関を切ったように涙が溢れてきた。



「…お母さん…また、来てもええよな??…あたしは、お母さんの娘やんなぁ???距離ありすぎるやん。何か…何か娘のあたしだけ…お母さんの事何にも知らん気がして…」



しゃくりあげながら、あたしがそこまで言った時。



お母さんは、あたしを抱き締めてくれた。



「あたしの娘は、多嘉穂一人やよ。
17年も離れてしもてたらね、知らなくて当たり前。
お母さんも多嘉穂の事何にも知らんて。これから知ってけばいい」



空港内の人混みの中で、あたしは声を上げて泣いた。

お母さんも泣いていた。
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