しなやかな腕の祈り
母と裕子さんの出会いは23年前にさかのぼる。
当時母は24歳、裕子さんも同い年だと。
裕子さんが母と言う…大屋千秋という人間と知り合った時
母は歳の割に擦れた感じのする、無口で冷徹な女性だったそうだ。


「はっきり言って、いけ好かなかった。」


裕子さんは笑って言った。
マドリードにある王立マドリード何とかって言う
やたら長い名前の大学の、スペイン舞踏学科の受験生として
二人ともスペインの地を踏んだそうだ。



たった2人の日本人。裕子さんが試験に落ちる事を
心配してビクビクしているのを見て



「ビビらんでも平気さ。
あたしら引っ張られてきて
上っ面だけ試験受けただけゃから」
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