しなやかな腕の祈り
予想外の渋滞に巻き込まれて
家に帰り着いたのは、本当ならスタジオ入りしてなけりゃいけない時間だった。


急いで作業服を脱ぎ捨てて
着替えやすいジャージに着替える。


ファルダとサパトスを引っ付かんで家を出た。





スタジオに着いて、本当に"ほっ"とした。

まだ練習は始まっていなかった。




「あれ!?トビじゃん」




更衣室へ入っていくと、望美が素っ頓狂な声を上げた。




「帰ってきたんだ!!!」


「うん、ただいま」



あたしも笑顔で挨拶を返した。


望美は、あたしが所属するフラメンコ教室の生徒から成り立つ劇団
『椿木蜜華(つばきみつか)』で
あたしと、唯一のもう一人の第一舞踏手。



テンポが早くて、サパティアートをたくさん踏む曲を踊るのが得意なあたしに対して
望美はゆっくりしたテンポの曲をスカートを使って踊るのが得意な舞踏手だ。
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