しなやかな腕の祈り
そして、望美はあたしの事を"トビ"と呼ぶ。


理由は、仕事が鳶だから。


たったそんだけ。


別に他に理由はないらしい。





それに相対して、あたしも望美を
"ネコ"と呼ぶ。



猫みたいに可愛い顔をしてるから。



それだけ。





あたしには女の子で親友と呼べるのは
望美ぐらいだと思う。



「スペインどうやった???」

「良かったで。目的も達成できたしな」


練習着に着替えながら、望美に話す。


スペインへ経つ事を事前に伝えてあった人は
親方たちと望美だけ。



「目的達成できたなら良かったじゃん。
でも、あたしこれ以上は聞かない。」

「何で??」

「お母さんに会わせてもらった時の楽しみに取っときたいの」



望美はそう言って笑った。





これだから、望美は楽だ。

根掘り葉掘り聞かないから。

あたしの気持ちを汲んで話してくれる。



「啓太、何か怒ってたよ。
いきなりトビが何にも言わないでスペイン行ったぁ!!
とか言って。」



笑ってしまった。


やっぱり、ここでも怒ってたか。


啓太はやっぱり、所構わず怒る。

自分に正直だから。
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