満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「そのコソ泥が2件目に起こした事件の被害者なんだよ。」

イトーはそう言いながら誠の意識を集中させるようにピッと人指し指を顔の前に立て、話始めた。

「怪盗 glasses witchの2件目の犯行は約二ヶ月前。犯行現場は秋山 昭三さん宅。まぁ、この人がアノお姉さまの祖父にあたるわけでな。」

「盗まれたのは古い鏡。爺さんの趣味が骨董収集でその鏡が置いてあった部屋にはもっと高値の皿とか茶碗なんかもあったらしいんだけど、最初から決めてたみたいにその鏡だけが盗まれたらしい。」
へぇ~。と誠は頷きながら、いつも通り煙草を吸っている。

……コイツ、なんでコンナに詳しいんだょ。

「すご~い。詳しいねぇ。何でそんなに詳しいの?」

……ホントに………。

ん?

不意に後方から発せられた声に誠は振り返った。

「のわっ、川乃瀬さ…」

威圧感が存分に込められたじとっとした視線が誠を捕えてはなさない。

「千草……さん」

誠の振り返った先で千草が「よし」と言ってニッコリと微笑んだ。
頬と口角が綺麗に上がった笑顔はそこにあるだけで、周りの雰囲気を明るくする。

「やっと名前で呼んだね。相変わらず"さん"付けだけど…。」

……あんな威圧感タップリの目で見られたら逆らう気もなくなるよ。

無論、誠がそんなことを口に出すわけもなく、ハハと苦笑いを千草に返した。
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