満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
その余裕が千草には気になった。

魔法が効かない。

それは魔女にとってみれば攻め手を失ったに等しい。
あの笑みは自分はいつでもこの場から逃げられるという意味だろうか。

千草にはそうは見えない。

何か…この状況を打破する手段を持っている、そんな余裕に見える。

「やっぱり便利ねぇ。その聖域っての。」

ズズズズ。

地を這う重低音。自然界の音ではない、そもそも何の音かは分からないが悪寒がする。

不安がつのる。

「これならどうかな?」

ズズズ…。


音が止む。


そして二人は気が付いた。音の正体に。


「あれが…。」

誠が初めて目の当たりにする存在に向かい呟く。

glasses witchの足下から伸びる影の中…。

そこから出現した一つの存在。

「あれが…悪魔。」


漆黒のローブに身を包み体から闇を滲みだしている。

…あれが綾香ネェにとり憑いた悪魔。


ローブとにじみ出る闇のせいでその姿はおぼろ気にしか確認できない。

わかるのはそこに存在しているということだけ。
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