満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「んーとねぇ。」

ズズー。

「それは契約する時に必要だったの。もう何の役にも立たないんだけどね。」

ズズー。

…もう何の役にも立たないってことは…。

「その鏡、返してくれって言ったら。返してくれたり…しない?」

ズズー。

「いいけど、もしかしてアタシ知り合いの所から盗んじゃった?」

「悪いことしちゃったかな?それじゃ、近いウチに返しにいってくるね。」

…軽いな…。

「ちなみに他のは…?」

「ん?他の?」

ズズー。

「他のは残念ながら返せないんだよね。まだ、使うから。」

ズズー、プハッ。

どうやらスープまで飲み干したらしい。

「とりあえず鏡は来週にでも返しに行ってくるね。」

綾香はラーメンどんぶりに、ごちそうさまでした、と手を合わせ言った。

……とりあえず鏡は返してもらえるみたいだけど………これからどうやって盗みを辞めさせるかな…。

「ところで、誠?」

綾香は笑顔のままであるが声のトーンは少し下がっている。

「どうするつもり?」

「え?」

「アタシのこと、警察に通報するの?」

綾香の表情はあくまでも変わらない。

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