満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
「いい?誠。私のいう言葉を一字一句間違えずに言ってね。」

綾香の部屋、窓も閉めきられ厚手のカーテンで月の光も遮られ、部屋の中は蝋燭のみで照らされている。

「ちょい待ち。綾香ネェ。コレは何?」

誠は目の前のテーブルを見て言った。

さっきまでラーメンが乗っかっていたテーブルには蝋燭、千草の祖父の鏡、綾香いわくの魔導書、何も書かれていない羊皮紙が置かれている。

「契約の準備。」

……はい?

「誠にも魔法を覚えてもらおうかと思ってね。」

「私のサポートするんならやっぱり簡単な魔法位使えないと。」

…………んな、アホな。

「そんなに難しいことはしないから安心して。」

誠はもはや無言である。

誠の正面には何も書かれていない羊皮紙が一枚、その奥にはおぼろ気に誠の姿を写している鏡がある。

「誠~。親指貸して。」

綾香は誠の後方でガサゴソしながら言った。

……拇印でも押すのか?…そんなわけないか。

「何すんの?」

誠はそう言いながら肩口の後ろに親指を突き出した。

「ちょっと拇印をね。」

綾香が誠の親指を押さえながら言った。

「は?何でそんな、イタッ。」

指先の小さな痛みで誠は振り返った。
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