満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑
振り返った先には中央部からプクっと小さな血の膨らみが出来ている誠の親指と小さな針を持っている綾香がいた。

「何すんのっ?」

誠は手を引き戻そうとするが、綾香がそれを抑えた。

「ストップ。」

綾香は誠の親指をしっかりと抑えている。

「男の子なんだからコレくらいでグダグダいわない。」

綾香がそう言う間も誠の親指からは少しづつ血が溢れてきている。

「この位でいいかな。」

綾香は誠の親指を放した。

「誠、親指をそのまま羊皮紙の中央に押し付けて。」

「は?」

「言ったでしょ、拇印押すって。」

…綾香ネェ、これは拇印じゃなくて血判だろ。

「誠、そのまま離さないでね。」

綾香はそう言いながら本を開く。

「私の言うことをそのまま繰り返してね。」

綾香は一度目を閉じスウッと息を吸い込んだ。

カッと見開かれた綾香の目には今までには見られない真剣味があった。

「アルタゲルニ………………………………。」

綾香は静かに本に書かれた古代文字を読み上げ始める。
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